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私たちは日光の季節

顔も腫れている


その日は起きると体中痛かった。なぜ? しばらくぼやっとした頭で考えていると、落ちたことを思い出した網球肘

落ちたのは地下鉄の階段だ。ごろごろ転びながら、スカートでなくてパンツスーツでよかったとぼんやり思った。階段下ではまだ若い男が壁に手をつき腰を折り曲げて吐いていた。

帰ったとき家は森閑としていた。深夜一時半ともなれば仕方ない。お風呂も入らず顔も洗わずベッドにもぐりこんだ減下半身

パンツスーツだけは脱いだらしい。起きた時、上はインナー、下はショーツだった。パンツスーツがベッドと反対の壁の近くでくしゃっと丸まっているところを見ると、脱いで思いっきり投げつけたようだった。うっすらとした記憶の中で投げつけている自分が一瞬フラッシュした。

洗面所へ行く。鏡を見ると目が充血している。顔も腫れている。近くにあった輪ゴムで髪をくくると、顔を洗い、上下合わぬスエットスーツを着て下のリビングに下りていった。

壁の時計を見ると11時だった。11時。日曜日の11時。父母が仲人をした結婚式の引き出物の掛け時計。しばらくは時を打つたび、鼓笛隊のような人形が出てきて時間ごとに違う音楽を奏でていたが、いつの間にか人形たちは時々飛び出すが音楽はなくすぐに引っ込むようになり、やがて引っ込んだきりになり、時を告げるものはいなくなった防皺祛皺
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